「宇宿允人の世界」に想うこと
東京芸術劇場大ホールで開催された「宇宿允人の世界」に2日間連続で通い、感じたことを今日は書く。両日とも盛況で、いわゆる宇宿信者でほぼ満員。1曲1曲終わるごとに「ブラヴォ」という声が聴かれたが、演奏の善し悪しは別にして、コンサートというよりは何かの儀式といったほうがいいように思われる節もあるにはある。ちょうど朝比奈隆が文化勲章を受章して以降、溢れんばかりの若者で満員になったコンサートホールの情景とちょっと似たような錯覚に陥る光景も見られた。ただし、芸風や格は明らかに朝比奈御大が上なのだが。
宇宿率いるフロイデ・フィルハーモニーのプレーヤーたちはとても一生懸命で甲斐甲斐しさが伝わってくる。僕は今年になって初めて彼のコンサートでベートーヴェンを聴き、びっくりし、のけ反り、それ以来毎回ホール通いをしているが、残念ながらオケの調子や聴衆のエネルギー等の影響も含めて出来不出来がとても激しい。このオーケストラは核になる演奏者(いわゆる本当の信者でしょう・・・)がいて、あとは毎回エキストラでまかなうという臨時編成の形態を常にとっていると聞く。どうやら宇宿さんの指導はリハーサル中怒声が飛んだり、時には指揮台を投げつけられたりなど、彼の音楽作りへの愛情ともいえるのだが、その裏返しの奇行がメンバーに受け入れ難いもので、プロの演奏家が敬遠したがるほど厳格なものらしい(厳格といえば聞こえはいいが、ほとんどいじめに近いものとも聞く(笑))。
そういう裏話を知っているものだから、余計に演奏そのものに興味を持つのだが、果たして今回の2日間も全く別のオーケストラではないかと思わせるほどの違いようで、人間とは面白いものだな、と思うと同時に、音楽はやっぱり人間が作っているもので、良くも悪くも生きているんだな、ということを実感したのが収穫であった(簡単なコンサート・レビューは「早わかり古典音楽講座」HPに記載する)。ひょっとすると舞台裏では2日目、指揮者の罵声が飛び交うような壮絶なリハーサルが行われたのかもしれない(勝手な推測)。
チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」作品71a
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団
今回の「宇宿允人の世界」のアンコールとして舞台にかけられたのは両日ともこの「くるみ割り人形」から「花のワルツ」。テレビ・コマーシャルや映画など様々なシチュエーションで使用されている音楽だから、誰でも知っているだろう有名な音楽。欧米ではクリスマス・シーズンに好んで演奏され聴かれるチャイコフスキーの名曲中の名曲である。音楽玄人には甘すぎて少々物足りなさを覚える人もいるだろうが、このデュトワ盤はオーケストラの音色といい指揮者のエネルギーといいとてもきれいで一度は聴いていただきたいおススメ盤である。
ところで、デュトワはN響の監督を辞めてからどうしているのだろうか?10年ほど前までは新譜も続々発売され、そのたびに名演奏を聴かせてくれていたので音沙汰がないことがとても残念である。
1.[返信]
読んでいて面白かったです。
演奏したものをお客様がどのように聞いているか知りたく、このページにたどりつきました。
別に信者ではないのですが、よく演奏会に出てます(笑)。
宇宿さんのいいたい事はなんとなくわかってきたので、自分のスケジュール調整がきく間は出演させていただいてます。
かつ、自分の尊敬していた方がセカンドトップにいたというのも出演の目的の一つです。
「いわゆるプロオケ」は曲を知り尽くしているから、指揮者の棒を取り入れつつ自分の知っているを演奏をすると思うのですが、きっとそれが宇宿さんには納得がいかない部分があると思うのです(何度も同じ曲をやっていると練習から常に棒に対して120パーセントの集中が難)(あくまで予想)。だから、宇宿さんは「いわゆるプロオケ」において「自分が納得」できる練習をすることが難しいのではないでしょうか?
宇宿さんは管楽器プレイヤー出身ですから「こう演奏するべきだ、」を目指されているのだと思うし、それを何とか伝える為に「宗教的な」教え方になるのかも知れません(笑)。
宇宿さんは「私を心底唸らせるような、人間的な音楽を奏でてくれ、泣かせてくれ」と言っている気がします。
一応、演奏者として私は宗教に勧誘された事もありませんし、信者としての行動もとっていません・・・。
私は「宇宿世界」が聞きたいといって来て下さるお客様の為に、自分のできる範囲での「宇宿さんの奏でたい音楽」にそって演奏させていただいております。
投稿者: とおりすがり | 2008年01月08日 12:49
日時: 2008年01月08日 12:49
2.[返信]
>とおりすがり様
コメントありがとうございます。あの日あの場で演奏されていた方に読んでいただけるとは僭越ながら感謝です。僕はプレーヤーではないので演奏者の立場に関して本当のところはわかりません。しかし、勝手ながら感じるままをいつも書かせていただいています。
>「いわゆるプロオケ」は曲を知り尽くしているから、指揮者の棒を取り入れつつ自分の知っているを演奏をすると思うのですが、きっとそれが宇宿さんには納得がいかない部分があると思うのです(何度も同じ曲をやっていると練習から常に棒に対して120パーセントの集中が難)(あくまで予想)。だから、宇宿さんは「いわゆるプロオケ」において「自分が納得」できる練習をすることが難しいのではないでしょうか?
なるほど、そういうことなんですね。とても参考になりました。
何だかんだいいながらも、僕は宇宿ファンです。今後ともよろしくお願いします。
投稿者: おかちゃん | 2008年01月08日 22:26
日時: 2008年01月08日 22:26