ピリスのショパン!
「チベット体操!世田谷教室」が某タブロイド版夕刊紙の取材を受けるということで、男性実践者の一人としてコメントをいただきたいとお声が掛かった。昼には所用があったので、わずか1時間ほどだったが参加者の方々と交流し、チベット体操の効果(というか体験談)を少しばかりお話させていただいた。考えてみれば「チベット体操」なるものを始めてからかれこれ5年目に突入する。その間、一日たりとも休まず続けているのが自慢といえば自慢だが、確かに目に見えて効果が感じられるので、結果的には「辞められない」のである。1回1回自分の内なる声に耳を傾け、無心に身体を回転させ、深い呼吸を伴ったポーズをとる作業はもはやなければならない「習慣・日課」になっている。
以前雅之さんがコメントで書いておられたピリスのショパン後期楽曲集を聴いた。同じく輸入盤の発売が待ちきれず、我慢ならず手を出してしまったのだが、多少値が張るとはいえ解説書の装丁や内容は国内盤ならではのもので、これはこれで良しとする。
ところで、その内容。CD2枚に亘って収録された楽曲はその全てが「精神性」の高い、まさに晩年のショパンの心情や境地を体現した屈指の名演奏で、もうこれは山あり谷あり様々な人生経験を積んだ、ある程度年齢を経た演奏家でなければ表現できないだろうと思われる最強のショパン・アルバムだと独り心の中で感動して絶叫してしまった(笑)。
何となくCD2から聴き始めたのだが、特に、第1曲目の「幻想ポロネーズ」は(これはショパンの最高傑作の一つだと僕は考える)、例のカーネギーホールでのホロヴィッツの凄演とは全く違うノリと解釈で弾き切った女性ならではのたおやかな演奏で、もうのっけから卒倒しそうになったほどだ。それに、先日愛知とし子が多治見公演でも披露した「3つのワルツ作品64」。参った。圧倒的にピリスの勝ち(笑)・・・(あ、当たり前か・・・)。ゆったりとした余裕のあるテンポと息遣い。特に、嬰ハ短調はこうでなければならない。かのルービンシュタイン以上に愁いと哀しみが内面から滲み出るような演奏で、この曲のイチ押し推薦盤。これは必聴!
ショパンのアルバムでは楽曲のジャンルごとにまとめたりして音盤をリリースする傾向が昔から強いが、作曲年代に焦点を当てて収録した今回のような音盤リリースは、作曲家のその当時の心境などがいかに楽曲に直接的に反映しているかが手に取るようにわかり、好企画であると僕は思う(20年以上前にアシュケナージが同様の趣向で全集をリリースしたように記憶するが、さしてアシュケナージ好きではないので購入もしていなければ聴いたこともない)。
当時のショパンは、体調不全に、敬愛する父親の死が重なり、挙句は愛人ジョルジュ・サンドとの別れなど、精神的肉体的に奈落の底まで突き落とされていたような状況にあった。そういう「負」の状態であったからこそ創出できた芸術の深みが至るところに感じられるのだが、「死の恐怖」の裏に垣間見える「生への憧れ」にフォーカスが当てられているようで、決して「重過ぎず」、「暗すぎず」、一気に晩年のショパン・ワールドに惹き込んでしまうのだからピリスの才能に恐れ入る。
1.[返信]
このCDを聴いた後、吉田秀和さんのレコ芸10月号の評を読んで、思わず膝を打ちました。吉田さんは、ルイサダやポリーニのショパンの新譜と比較しながら、次のように書いておられます。
・・・・・・技法的にいえば、ショパンもこのころ(後期)になると、あの単旋律に伴奏という二本の線による書き方(描き方)から、ポリフォニーの言葉である点は同じだが、その枠内で、和性の中声部にあたる内声にも工夫をこらし、上声の旋律のあとを追いかけるようにして、もう一方の旋律的モチーフを――ちょっとカノンのように――つけ加えるようになっていた。例えば作品59のマズルカの第一番、ここでは右手の旋律に左手で三拍子の伴奏を軽くつけるような書き方でなく、その軽い伴奏の内声からさえ歌がきこえてくる。
この点で特に注目をひくのは作品62の二曲のノクターン。ここでは強弱の変化だけでなくテンポの微妙な緩急のつけ方と、対位法的な線の操作とでポリフォニックな効果が引き出されてきているのだ。
(中略)
前述のような旋律1本に伴奏のついたホモフォニーの音楽が主体だったショパンの作曲の仕方に、(後期作品になると)やや変化が加わって、少しではあるが対位法的な工夫が施されるようになった。ピリスのCDでは、まさにそうなってからのものが主にとり上げられている。そうして、彼女は、このCDではその点を、強調するように弾いているのだ。・・・・・・
私は、前におかちゃんが、ショパンの若書きのピアノ・ソナタ第一番ハ短調作品4を紹介しておられた時のブログ記事を思い出しました。その後、私はこの曲を勉強のため何回か聴いてみましたが、若きショパンはソナタ形式などとともに、対位法にも随処でチャレンジしていますね。でもお世辞にもあの作品ではあまりうまくいっているとは思えなかった。
しかし、ピリスが取り上げたこれら後期の作品で、ショパンは見事に対位法を自分のものにしていると私も思うのです。そしてピアノ・ソナタ第一番で散々悪戦苦闘したソナタ形式と対位法を、ついに我がものとして書かれた晩年の傑作こそ、ピリスのこのCDにも入っているチェロ・ソナタト短調作品65だと思うのです。
チェロ・ソナタのような室内楽の傑作を、ショパンにはもっと長生きして、数多く書いてほしかったです。
投稿者: 雅之 | 2008年11月22日 00:37
日時: 2008年11月22日 00:37
2.[返信]
訂正 吉田秀和さんの、このピリスの新譜についての評、レコ芸11月号でした。
投稿者: 雅之 | 2008年11月22日 00:57
日時: 2008年11月22日 00:57
3.[返信]
>雅之様
おはようございます。
貴重なコメントありがとうございます。
レコ芸の吉田氏の文章は、僕も昨日聴いた後じっくりと読みましたが、とても的を射た評ですばらしいですよね。
ただ、僕は雅之さんと違い、楽器ができないですし、理論的にはさっぱりなので、楽曲を分析的に聴くことが残念ながら不得手でして(苦笑)。あくまで感覚的にしか聴けてないので、雅之さんのコメントは本当に勉強になります。
>チェロ・ソナタのような室内楽の傑作を、ショパンにはもっと長生きして、数多く書いてほしかったです。
おっしゃるとおりです。
投稿者: おかちゃん | 2008年11月22日 10:15
日時: 2008年11月22日 10:15